イタリア語・実践編 第1回:レストランで
接続法のシリーズでは、文法の話をしてきました。今回からは、実際に使う場面の話をします。最初はレストランです。旅行でも、留学でも、いちばん先に必要になる場所だからです。
今回は南イタリアのプーリア州を舞台にします。長靴のかかとの部分。白い街と、オリーブ畑と、透きとおった海の土地です。そして——ここがいちばん大事なのですが——日本人の口にとてもよく合う料理がある土地です。
1. まず、何を食べるか
プーリアの料理は、素材が少なく、味が濃すぎません。日本の食卓と似たところがあります。とくにおすすめを、理由といっしょに挙げます。
Burrata(ブッラータ)——いま日本でも人気ですが、本場のものは別物です。外側はモッツァレラ、中は生クリームとチーズの繊維。ナイフを入れると中がとろりと流れ出します。プーリアのアンドリアという街が本場です。
Crudo di mare(魚介の生)——プーリアの海辺では、魚介を生で食べます。海老、うに、牡蠣。レモンと少しのオリーブオイルだけ。刺身に慣れた日本の方には、いちばん親しみやすい料理かもしれません。
Tiella di riso, patate e cozze——米・じゃがいも・ムール貝を重ねてオーブンで焼いたもの。イタリアで「お米の料理」に出会えるのは珍しく、日本の方には懐かしい味です。

Orecchiette(オレッキエッテ)——「小さな耳」という名前のパスタ。プーリアの主役です。定番は cime di rapa(菜の花に似た青菜)と合わせたもの。少し苦みがあって、油っぽくありません。
Focaccia barese——バーリのフォカッチャ。ミニトマトとオリーブがのった、厚くてやわらかいパン。朝でも、おやつでも。
Taralli(タラッリ)——小さくて硬い輪の形のパン。食前にワインといっしょに出てきます。おみやげにも軽くて便利です。
Pasticciotto(パスティチョット)——レッチェの名物。さくさくの生地の中にカスタードクリーム。温かいうちに食べるのが本当です。カスタード好きの方は、必ず気に入ります。
飲み物は、赤なら Primitivo か Negroamaro。しっかりした味です。お酒が苦手なら latte di mandorla(アーモンドミルク)を。南イタリアの夏の飲み物です。
水は必ず聞かれます。naturale(ガスなし)か frizzante(ガス入り)か。

2. 店に入る ——「Ha prenotato?」
ドアを開けると、まずこう聞かれます。Ha prenotato?(ご予約はありますか)。
予約していなければ No, non ho prenotato。そして人数を Siamo in due(2人です)。ひとりなら Sono sola(女性)/Sono solo(男性)。これで席に通してもらえます。
あいさつは、昼なら Buongiorno、夕方から夜は Buonasera。イタリアでは、店に入るときに黙って入りません。ひとこと言うだけで、空気がやわらかくなります。

3. 注文する ——「読めない」は問題になりません
メニューが読めなくても大丈夫です。魔法の言葉が2つあります。
Cosa mi consiglia?(おすすめは何ですか)。これを言うと、その店がいちばん自信のある料理が出てきます。旅の食事としては、いちばん外れの少ない選び方です。
そして Che cos'è …?(…とは何ですか)。知らない料理名を指して聞くだけです。イタリアでは、料理について質問されて嫌がる店員はいません。むしろ喜ばれます。食べものの話は、この国ではいちばん楽しい話題だからです。
決まったら Prendo …(…にします)。これで注文が成立します。Basta così, grazie(以上で大丈夫です)で締めくくります。
そして食べ終わったら、ぜひ Buonissimo!(とてもおいしかった)と言ってみてください。この一言で、店の人の顔が変わります。
4. 最後に、お金の話を少しだけ
ここからは、楽しい話ではありません。でも知っておくと、安心して食事ができます。
まず、払って当然のものがあります。coperto(席料、1〜3ユーロほど)と、店によっては servizio(サービス料)。メニューに書いてあれば、これは正規の料金です。2ユーロのことで言い争って、旅の一日を台無しにする必要はありません。書いてあるものは、その店の値段として払いましょう。
問題になるのは、桁が違うときだけです。メニューと違う値段、頼んでいない料理、そして魚。
魚は「量り売り」のことがあります。「8ユーロ」と言われたのが100グラムの値段で、一匹で90ユーロになる——観光地で実際にある話です。法律では、キロ単位の値段を明示し、調理の前に重さを伝える義務があります。ですから、頼む前にこう聞いてください。Al chilo? Quanto pesa? Quanto viene in totale?(キロ単位ですか。何グラムですか。合計いくらになりますか)
そして、いちばん確実な方法をひとつ。質問をひっくり返すのです。魚を選んでから値段を知るのではなく、先に金額を決めてしまう。
Mi può fare un piatto da venti euro?(20ユーロ分で一皿作っていただけますか)
この一言で、驚きはなくなります。お店の人も、その範囲でいちばんいいものを出してくれます。値段の話をこちらから先にする——それだけで、あとの心配がぜんぶ消えます。
ここで、店の種類によって流れが変わります。
メニューに値段が書いてある一皿(orata al forno、frittura など)は、値段が決まっています。心配はいりません。
問題になるのは、「本日の鮮魚」を量り売りで出す店です。この場合、多くの店では調理の前に、魚を生のまま見せに来ます。ここが唯一のチャンスです。厨房に入ってしまえば、もう戻れません。見せに来たその場で、こう聞いてください。Me lo pesa, per favore? Quanto viene?(目の前で量ってください。いくらになりますか)
見せに来ない店なら、こちらから言えます。Me lo fa vedere prima di cuocerlo? Quanto pesa?(焼く前に見せてもらえますか。何グラムですか)。法律でも、重さは調理の前に伝える義務があります。
遠慮はいりません。「細かい客だ」と思われても、30秒の質問で90ユーロの請求を防げます。日本の感覚では聞きにくいところですが、イタリアでは誰もが普通にしていることです。
魚が大きすぎるときは、こう言えます。È troppo grande. Ne ha uno più piccolo?(大きすぎます。もっと小さいものはありますか)。あるいは Me ne dia metà, per favore(半分でお願いします)。断られることもありますが、この一言を言えるお客だと分かった時点で、あとの会計はきちんとしたものになります。

5. 知っておくと強い、3つの決まり
イタリアの法律は、実は客の側に立っています。3つだけ覚えておいてください。
① 値段は「外」にも出す義務があります。店に入る前に読める場所——ウィンドウ、入口、その近く——に掲示しなければなりません。入る前にスマホで撮っておきましょう。これが、あとで何かあったときのいちばん確かな証拠になります。
② テーブルサービスの店では、注文の前にメニュー(値段表)を渡す義務があります。コペルトやサービス料も、そこに書いてなければなりません。1940年の法令第180条、現在も有効です。違反すると308〜1,550ユーロの罰金、重い場合は営業停止。ですから Posso avere il menù con i prezzi? は、お願いではなく当然の権利です。
③ 掲示された値段より高く払う義務はありません。メニューと違う金額を請求されたら、その場で Sul menù c'era un altro prezzo(メニューには違う値段が書いてありました)と言えます。多く払ってしまった場合、差額の返還を求める権利もあります。
それでも解決しないときは、カードで払ってください。記録が残り、あとから落ち着いて争えます。そして「では警察を呼びます」= Allora chiamo la polizia。番号は 112、無料です。地元警察(Polizia Locale)、財務警察(Guardia di Finanza)、市の窓口、消費者団体——どこも受け付けてくれます。実際には、口に出すだけで会計が正しくなることがほとんどです。
最後にもう一度。ほとんどのお店は、きちんとしています。この5つの文は、疑うためではなく、安心して楽しむためのものです。値段を先に聞くのは、イタリアではまったく普通のことです。
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